June 16, 2008

沢庵和尚の墓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本編ではカットした、コラムの時の「漬物編」の書き出しです。結局、アンケートもカットしました。

 ――――――――――――――――――――――――

 早く傷むから、という流通上の理由で、めったにお目にかからないのが葉付きの大根だ。だからたまに近所の八百屋や農家の軒先(武蔵野のわが家のあたりは農家が多く、自家作物を売っている)に並んでいたりすると、ほぼ購うことにしている。

 どうするかというと、手に入れたらまず葉を切り離し、本体は捨てる。ウソだよ(笑)。その葉を水洗いした後ザク切りにし、ボールなどに取り、一掴みばかりの塩を投げ入れて手でもって葉を揉む。とにかく揉む。どれぐらい揉むかというと、ボール一杯あった大根葉が片手に載るほどの量になるまでだ。

 塩揉みすると何とも青臭い薄緑色の水が出る。その臭いにもめげず揉み続けるとますます水分が出てくるから、葉を絞っては水を捨て……を繰り返し、そう、青臭さがほぼなくなるまで揉んでいると、だいたいそれぐらいの量になるはずだ。そうなったら葉をひとまとめにし、上に皿などを置いて軽く重しをかけ、一晩置いて塩と熟らす。

 ――「大根葉の一夜漬け」の完成です。

 

 こいつが美味い。とくに朝めしによく合う気がするが、それはかすかな青臭さとほろ苦さが寝惚けた舌に心地よく感じるせいかもしれない。そこに本体を千六本に刻んで実にした味噌汁と、おろしたやつにちりめんじゃこ、あるいは鰹節を散らした小鉢を添えれば、大根づくしだが朝めしのメニューとしては十分だろう。

 

 ちなみに「千六本」というのは大根にしか使わないことばであることを知っていた? なぜか。大根の漢名は「蘿萄」で、北京語ではロープと発音するそうな。それで、千切りにした大根は「繊蘿萄」(チェンロープ)と言い、それが訛ってセンロッポンになったらしい。

 

 それはともかく、種々ある漬物類の中で、この大根葉はぼくの好きなものの一つなのだが、こいつだけはスーパーなどで売っていないから、面倒でも自分で拵えるしかない。糠漬けのほうが美味いだろうと思われるけれども、さすがに糠床まではやっていないので、漬物の原点であり、かつ簡単な塩漬けにして楽しんでいるわけだが、前述のごとく葉付き大根自体にめったにお目にかかれないので、食せるのは年に数回しかない。いったい切り落とした大根葉は流通の過程でどう処理されているんだろう、と気になる。美味いんだから、漬物にして売ってくれれば、人は知らんがぼくは買うぞ。

 

 ――というわけで、ぼくは大根葉が好きだが人はどうか、「友人・知人朝めしアンケート」の【質問4】で「朝めしの漬物で一番好きなものは何か?(梅干しを除く)」を問うた。

 

 「九州は白菜漬けで決まり! あとは阿蘇名産の高菜でしょう。四月ごろの“新”でも、ちょっとすっぱい“古”でも好きですね」(五〇代♂、九州のスポーツ紙デスク)

「ふるさと富山でよく出る小ナスの一夜漬け。長さ五センチ程度の小ナスを鮮やかなナス紺に染め上げる天下の逸品。中は真っ白、すっきり辛口、スーパードライ感覚で、私は夏、帰省したときは一日で二十個ほども食らっています。私にとっては、世界一の漬物です。この小ナスは漬物用の特殊なもので、富山以外では手に入らない。したがって富山以外で市販していません」(五〇代♂、ライター)

 そう。その地方それぞれに特色ある漬物が存在するから、漬物の好みというのは、自分がどこで生まれ、どう育ってきたのかというアイデンティティにかかわることかもしれない。

「夏はキュウリとナスビ、冬は白菜」(五〇代♂、雑誌編集長)   

 そう。漬物はその素材によって季節を感じさせてくれる、日本人には俳句の季語のような、“侘び・寂び”な食物だと言えるかもしれない。

 

 ……などと回答を見ながらいろんな思いに耽っていたら、“和の朝めし”と言っているのに「断然キムチ!」(四〇代♂、編集者)のような大ボケもいるんだ、中には。

 しかし、そのボケ……いや彼が言うには、「あまり朝めしと漬物はつながらない」のだそうで、そういえば前出「富山の小ナスの一夜漬け」氏も、「梅干以外、朝食に漬物を食う習慣はなくなってしまいました」と言うし、「漬物は何でもよい。なくてもさしたる不自由は感じない」(六〇代♂、悠々自適)というのもあり、はっきり「食べない」(二〇代♀、大学生。いや、就職したのかな?)という回答もあって、「米飯・味噌汁・漬物」という“近代日本食の基本パターン”、本稿で言えば“朝めしの定番”ももはや崩れ去りつつあるのか……という思いもしたのだが、ともあれ集計結果は以下のようになった(複数回答)。

 

   胡瓜11/白菜6/茄子5/蕪3/タクアン2/高菜2。

 以下は一点ずつで、大根・キャベツ・水菜・茗荷・キムチ(怒)。 

 その他、「浅漬けなら何でも」「食べない」各2。

  うち胡瓜や蕪は「糠漬け」あるいは「浅漬け」と特定された回答もあったが、その他の漬物はタクアンやキムチ(怒)、高菜漬けはわかるが、素材名だけでは何漬けか不明なので、素材だけのランキングにした。

 しかし、大した調査ではないけれど、この結果を見て思うのは、回答者の多くが東京在住者ということもあるのだろうが、漬物の好みの範囲が狭いことだ。たぶんほとんどが糠漬けか塩漬けで、「なくてもいい」「食べない」という回答を重ねると、漬物という食物に対する関心が低いのかもしれないとも思う。

――――――――――――――――――――――――

 この結果などをして、本編では「漬物の扱われ方がぞんざいだ」と書いたのだった。



(04:22)

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by ケイトスペード リボン マザーバッグ   May 07, 2014 08:15
非常 記述 記事 酔夢楼日常:大根葉の一夜漬け 朝めし拾遺-3 - livedoor Blog(ブログ) 、私はビットたくさん 楽しんだという。そこにパート2になります?

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔