May 18, 2005
もちろんサントリーのウイスキー・オールドのことだが、商品名由来でない愛称を持つ酒なんてほかにあるだろうか。
裏返せばそれだけ愛されたということで、いや実際、ついこの間までオールドは国産ウイスキーを代表する商品だった。
裏返せばそれだけ愛されたということで、いや実際、ついこの間までオールドは国産ウイスキーを代表する商品だった。
なぜそれほど愛着を持たれたのか。それは、戦後日本のサラリーマン社会のある種あこがれの対象だったから、と言っていい。
オールドの登場は復興期の1950年(昭和25)。とはいえ大手企業の平均給与だって1万3000〜5000円程度という時代に、この新商品は1500円もしたから、安月給族はもっぱらちょっと前、1946年(昭和21)に出た同じサントリー(当時は「寿屋」)のトリスウヰスキーで満足していた。「トリスバー」なんてものができるのが、この時代です。
しかし、まもなく日本は高度経済成長期に突入、“一億総サラリーマン時代”の幕が開く。
しかし、まもなく日本は高度経済成長期に突入、“一億総サラリーマン時代”の幕が開く。
サラリーマンの生きがい、やりがいは何といっても出世である。
一方、景気がいよいよイケイケドンドンになった頃、よく言うところの“右肩あがり”の時代ってやつですが、サントリーは「二本箸作戦」なる戦略を展開する。ウイスキーを和食料理屋など“二本箸”の店にも置かせようというもので、提案されたのが和食にも合う「水割り」なる飲み方(昔の映画を見ると、それこそトリスバー的なところで客はウイスキーをストレートで飲んでいる)と「ボトルキープ」というシステム。その中心商品がオールドだった。
この図式が崩れるのは、直接的には外圧による1989年の税制改革によって輸入洋酒が一気に安くなったためで、それまでスコッチのジョニーウォーカー赤ラベル(通称ジョニ赤)でももらおうものなら、それこそ居間に置いた安っぽい合板製のサイドボードなんぞに飾り、何か特別なときだけ栓を開ける、というようなものだったのが、その上のクラスで高級輸入洋酒の代表だったジョニ黒だって、いまや2000円台で買えてしまう時代になっているものね。
ぼく自身のことをちょっと記せば、給料者生活をしたこともあるけれど、そんなウイスキーにシンボライズされるような社会にいたわけではないので、無縁だった。初めて飲んだウイスキーはサントリー・レッドで高校生の時だったが、社会人になって、20代におおむね飲んでいたのはサントリー・ホワイト(新宿ゴールデン街に入り浸っていた)で、その次と言えば前述のように輸入洋酒が安くなったことと、酒の雑誌で仕事をしていた関係でハマったことから、いきなりバーボンに飛ぶのだけれども、最近の若い連中に、「最初に飲んだウイスキーは何?」と問うと、「ワイルドターキー」だの「グレンリベットの12年」なんて答えが返ってきて……ちょっとばかりクヤシイ。
そこで、大衆酒トリスと高級酒オールドの間に、戦前生まれで名品と言われた角瓶(通称「カク」。1937年=昭和12)を置いて、これが出世のシンボルとなった。つまり、いまはトリスを飲んでいるけれど、いつかはカクを飲むぞ、さらに出世できたらオールドを飲むんだ――という図式ですね。
一方、景気がいよいよイケイケドンドンになった頃、よく言うところの“右肩あがり”の時代ってやつですが、サントリーは「二本箸作戦」なる戦略を展開する。ウイスキーを和食料理屋など“二本箸”の店にも置かせようというもので、提案されたのが和食にも合う「水割り」なる飲み方(昔の映画を見ると、それこそトリスバー的なところで客はウイスキーをストレートで飲んでいる)と「ボトルキープ」というシステム。その中心商品がオールドだった。
以降、サラリーマンの酒の飲み方といえば、ボトルをキープして水割りで、というスタイルになっていくのだが、このボトルキープという日本独自のシステムもまた、“いつかはオールドをキープするぞ”という彼らの向上心をあおっていき、所得も増えてサラリーマンが時代を謳歌できるようになると、酒場の棚は社用族のダルマ(タヌキ)で埋め尽くされていった。
この図式が崩れるのは、直接的には外圧による1989年の税制改革によって輸入洋酒が一気に安くなったためで、それまでスコッチのジョニーウォーカー赤ラベル(通称ジョニ赤)でももらおうものなら、それこそ居間に置いた安っぽい合板製のサイドボードなんぞに飾り、何か特別なときだけ栓を開ける、というようなものだったのが、その上のクラスで高級輸入洋酒の代表だったジョニ黒だって、いまや2000円台で買えてしまう時代になっているものね。
が、それだけではない。同時に、時代はバブル崩壊(1991年)直前で、終身雇用・年功序列・給料はベースアップで毎年上がる――というような従来のサラリーマン社会構造の終焉も間近だった、そのことも無縁ではないと思う。
ぼく自身のことをちょっと記せば、給料者生活をしたこともあるけれど、そんなウイスキーにシンボライズされるような社会にいたわけではないので、無縁だった。初めて飲んだウイスキーはサントリー・レッドで高校生の時だったが、社会人になって、20代におおむね飲んでいたのはサントリー・ホワイト(新宿ゴールデン街に入り浸っていた)で、その次と言えば前述のように輸入洋酒が安くなったことと、酒の雑誌で仕事をしていた関係でハマったことから、いきなりバーボンに飛ぶのだけれども、最近の若い連中に、「最初に飲んだウイスキーは何?」と問うと、「ワイルドターキー」だの「グレンリベットの12年」なんて答えが返ってきて……ちょっとばかりクヤシイ。
(『P's ANIMO』誌 2004.WINTER号掲載分に一部加筆)
(20:35)
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