April 16, 2005

 高田渡が死んだ。
 夕刊を広げたら、写真入りで載っていた。
 
 今月3日、ライブに出向いた先の北海道・釧路で具合が悪くなり、コンサートでは『生活の柄(がら)』――高田渡の1曲ということになれば、やはりこれでしょうね――をはじめ15曲も演ったそうだが、翌朝救急車で運ばれて入院、意識が戻らないまま今日(16日)未明に亡くなったそうだ。死因は髄膜脳炎。一見、とてもそんなに若いとは見えないのだが、まだ56歳だった。
 ピンポイント・ライブでの高田渡
 久々に高田渡のライブを見たのは、綾戸智絵ファンクラブ代表であり、毎日毎日ウェブに「万歩計日和」という日記(リンク参照)を書き綴っている友人・Iさんが主催した「Pinpoint Live」(at下北沢)で、いつのことだったか、サイトにアクセスし、キーワード「高田渡」を打ち込んでバックナンバーで調べてみたら、ついこの間だと思っていたのに、一昨年(03年)9月だった。

“久々”とはどれぐらいぶりかというと、たぶん70年代以来ではなかろうかと思う。
 あの頃は「フォーク」の時代であり、ぼく自身フォーク少年であったから、あちこちのフォーク・コンサートでよく見た……というかナマで聴いた。五つの赤い風船とのカップリングで発売されたデビューアルバム(両者ともライブである)を持っていた。加川良・岩井宏とのトリオで演るのが好きだった。ジャグバンド・スタイルの武蔵野タンポポ団も楽しかったし、吉祥寺「ぐわらん堂」でのライブにも足を運んだ。その頃から、すでにして老人の趣があった。

 だから、本当はフォーク嫌いらしいIさんから「ウチのライブで高田渡をやろうと思っているんだけど」と聞いたとき、「いいね、やろうよ、やろうよ」と大賛成した。
 ところが、そのライブの日は、ちょっと出遅れたところに、運悪くJR中央線が事故かなにかで止まっており、ぼくが会場に着いたのはひとステージ終わって、休憩に入ったばかり。Pinpoint Liveには美味い酒が用意してあり、高田選手はと見ると、隅のテーブルですでにグイグイ飲っている。
 大丈夫かいな? とちょっと心配したのだが、案の定、2回目のステージではヨレヨレ。歌を歌うより、もはや呂律が怪しい口で喋っている時間が長い。せめて『生活の柄』だけは聞きたいと、Iさんにもうやったかどうかをこっそり訊ねたら、「リハではやったけど、本番はまだ」だと言うから、挙手してリクエストしたら、高田選手は「いいよ。でも、その前に1曲」と別の歌を歌い、それで力つきたのか本日のステージは終わり……って、おいおい、忘れてるじゃないか(笑)。
 ま、若い頃から、楽屋で飲み過ぎて、ステージでゲロしてしまったというような伝説には事欠かない人だったから、らしいっていえばらしいのだけれども。
 
 というわけで、その“久々”のナマ『生活の柄』を聞くことができなかったのが、いまとなっては残念だ。
 合掌。
 
(写真はそのライブ。『万歩計日和』より拝借。撮影:幡野好正)
※「生活の柄」はアルバム『ごあいさつ』(キングレコード)に入っている。


(23:21)

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